住所:989-6235 宮城県大崎市古川宮沢新田町34
TEL:0229-28-1605
FAX:0229-28-4580
大きな地図で見る

10/27 「三密」と「3密」_雑感10

空海が興した真言宗の教えに「身口意(しんくい)」を表す密教の「三密」があります。
 密教では,世の中のすべては大日如来の働きであるから,自分自身も仏である考えます。しかし,人は自分自身が仏であると気付くことは難しいでしょう。そこで,気付くための方法が,「三密」の修行です。<身密(しんみつ)>身体・行動,<口密(くみつ)>言葉・発言,<意密(いみつ)>こころ・考えという「身・口・意」の密を整えることで,即身成仏(生きたまま仏になる)できるというのが密教の教えです。
 コロナ禍に見舞われた今年,行動の基本は,密集・密着・密閉という3密を避けることでした。しかし,Withコロナと言われるように,感染防止の新しい行動様式をとることが当然になってきた昨今では,空海の「三密」にも通じる新たな「三密」の実践が必要になってきているのではないでしょうか。
 福島県にある真言宗豊山派壽特寺の松村妙仁住職によると,日常生活でできる三密の実践は次のようなものです。
【身密】
・自分の行動を見直し,大事なものを見極める。
・みんなの命を守る行動を取る。
・できる範囲で体を動かす。
・手を洗い,身を清める。
・自分勝手な行動はしない。自分さえよければそれでいいという気持ちで行動しない。
【口密】
・自分の言葉を見直し,正す。
・電話やインターネットなどを通して友人とたわいもない話をして気分転換する。
・ありがとうと感謝の気持ちを口に出す。
・うがいをしっかり行い,口を清める。
・自分のことを棚に上げて,人の悪口ばかり言わない。(インターネットに書き込まない。)
・人の上げ足を取らない。
【意密】
・自分の心の揺れ動きを観察する。
・こころをありのままに見て,自分に気づく。
・一歩立ち止まってこころを見つめる。
・自分だけでなく他者に気配りする。
・できる範囲で,自分がリラックスできること,こころが豊かになることをやってみる
・深呼吸してこころを落ち着かせる
・様々な情報をむさぼり,こころを惑わされない。
 マスクを着用して,思いやりの距離(ソーシャルディスタンス)をとることは,社会生活を営む上での基本的なマナーにもなっていますが,これはまさに「身密」です。更には,医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーへの感謝の心は「意密」,感染者や感染リスクの高い人への偏見・差別をなくすこと,言葉遣いに気を付け,相手を労わる言葉を使うこと「口密」ではないでしょうか。空海がこのコロナ禍を予期していたとは思いませんが,密教の教えの中に空海の先見性とその思想の普遍性を感じずにはいられません。